うるしの木を植えています

「土から人へ」

古くから漆は日本人の生活文化に根づいています。

漆の木が土から芽を出し、大きくなり、採取され、私たちのもとへ届けられるまでの歩みを深く知りたい。そして、文化を伝える仕事をしているものとして、漆について少しでも多くの人に伝えていきたい。
その思いで、漆の木を植えています。

「徳島での体験」

徳島県の祖谷地方では過去に、漆を採取していた漆掻き職人が何十人といたことを聞きました。いまもその技術が数少ない人々に受け継がれています。

その技術を伝承している方とお会いすることができ、漆の木について、そして掻き採る技術について貴重なお話を聞くことができました。

そこで出会った漆の木の巨大さに神々しさを感じました。
漆の木は、樹齢10年から15年で漆を採取できるようになり、採取後伐採する「掻き殺し」という採取方法を行っているため、徳島で見たように巨木にはなりません。

この木は30年以上この地で育っているそうです。この木から採取するということで、その作業を見学させていただきましたが、採取されている方の姿は、大自然に感謝し、なおかつ挑んでいるような光景でした。

「発見の連絡、そして植栽」

広島県の三次産漆生産組合の武田さんから連絡があり、広島県の東城と神石高原をまたがる帝釈峡から外れた森に漆の木があることを知りました。
漆の木は伐り倒されていますが、親木はそこに根を張っていて、ひこばえがあちらこちらから顔を出し、成長している光景を目のあたりにしました。親木の樹齢は30年ほどでしょうか。
切り株をみると年輪の間隔は広く、成長スピードが早いように感じました。

武田さんが地主の方の許可を取ってくださり、そこから13本の漆のひこばえを採取しました。

こうした分根法では種子から成長させるより成長スピードが速く、優良親木の性格を受け継ぐことができる利点があります。

採取したこの漆のひこばえを広島県神石高原町のとある場所に植栽することとなりました。愛着があるものには命名したくなります、それも固有のものと願って。

わたしたちはこの漆の木を「帝釈漆(たいしゃくうるし」とすることにしました。

スコップで土地に穴を掘り、深さ10センチ程のところに根を埋めました。この10センチというのは採取時に気付いたことで、漆の木は深く根を張らず、竹のように水平に根を伸びていくことを学びました。漆の木に棒を添えて金槌で打ち込み、さらに根の乾燥を防ぎ、水の溜まりを防ぐため5センチ程の盛り土を行っています。

植栽地の地形は緩やかな斜面で、東を向いています。もとは段々畑のような地形で、谷の方にはミョウガが自生しています。漆の木は太陽と水はけの良い土地を好むと聞いていますが、この地が適した場所なのか観察を進めていきます。

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